ニコニコ動画と2ちゃんねる(前篇・上) 〜 (仮)時代に見るニコ動ユーザーのルーツ

まえがき。

どもども、いつもの通り数多世界です。今回はですね、「ニコニコ動画2ちゃんねる」という題で長編ものに仕上げる予定です。
さてさて、なんでまたこんな話をするのかっていうと、皆皆さまはどうやらニコニコ動画のユーザーについてよく把握できていないようなので、私の記憶と経験と妄想を軸に筋立てた*1ユーザー実体を書いておこうと思ったのです。話の展開に無理があるなぁと思ったら、それは仕様です。むしろ補完してください、、、。
あとあと、私は投降後に頻繁に校正することが多いので、RSSとかアンテナとかから見ている人は注意してください。

ここに書くまでの経緯。

"ニコニコ動画(仮)の機能を振り返る"というエントリーをid:koizukaさんが書いた。
そういやニコニコ動画は(仮)から始まったんだよなぁ、って振り返った。振り返っていたらこんなことが起こった。

合唱祭「ニコニコ動画」に650人集合、人気タイトル22曲を熱唱 - 痛いニュース
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1068261.html

これとはてブコメント見たあと、こんなものが出てきた。

ニコニコと未成年 - インターネットの真の姿とは
http://d.hatena.ne.jp/qaze00/20071217/1197836483

この2つをみて「そろそろ書いておこうなぁ」って思った。で、調べたら情報少なすぎて涙目。どうしようもない数多憤死寸前。仕方がないから今ある情報と記憶を統合することにした。

その時、ニコニコ動画ははじまった。*2

ニコニコ動画、初日にしてつまづく。

2006年12月12日、ニコニコ動画が誕生。夏から構想を練ったドワンゴがついに完成させた動画共有サイトである。だがしかし、開設初日にしてサーバトラブルが発生し結局サービスできなかったこと、ドワンゴ社内から2ちゃんねるへの書き込みがブロックされていたために宣伝できなかったこととで引っ掛かり、結局13日に開設される。*3
13日、初めてニコニコ動画(仮)が表舞台に上がる。(仮)となったのは昔話第五話にあるように、コンセプトである「やる気のなさ」を反映してか"永遠のβサービス"が宣伝文句であるWeb2.0を罵倒して(仮)となったから。
結局13日にオープンしたニコニコ動画(仮)は運営による宣伝によってユーザーを増やし、、、てはいない。どうしようもない管理人ひろゆきが宣伝を行ったのだ。

ひろゆきの宣伝 - 胎動の瞬間

ひろゆきはまず、ニュース速報板(現・涙目ニュース速報板)に「もしもアシモが『8時だよ』に出たとしたら」というスレッドを立てた。インターネット上で初めてニコニコ動画が露出したときである。このことはニコニコ動画開発者ブログに書かれてある。


ひろゆきさんが紹介してくれました
http://news20.2ch.net/test/read.cgi/news/1165986337/l50
そのため、アクセスが一挙に増加しました。


ひろゆきさん投稿の動画に荒らしがあったため、
コメントサイズ、コメント文字、同一IPでの連続コメント投稿に
一部制限をかけました。


投稿された動画はASHIMOが転倒してしまった動画にドリフのBGMを付けた、これのこと。 >http://www.youtube.com/watch?v=Z-0bhh8q8Ac


そして数分後、ひろゆきはASKS? - 教えて君コミュニティーにある自分のブログに同じ動画を投稿した。*4


コメントが出来るYo**ube
http://nicovideo.jp/watch?v=utZ-0bhh8q8Ac

動画にコメントが出来るのがポイント。


最終昔話には「半分以上のアクセスはひろゆき氏のブログからでした。」とあるように、ほとんどがひろゆきブログからであった。こうして、ニコニコ動画(仮)はネット利用者の一部に知られたのである。

2ちゃんねるの中のニコニコ動画

ニコニコ動画(仮)は2ちゃんねるの一部であった。

ひろゆきブログによってニコニコ動画(仮)は広く知られたのであるが、見知ったのは殆ど2ちゃんねらーである。と言っても、それ自体は運営自ら望んでいたのだが。
ニコニコ動画(仮)を新しい"遊び場"と認識した2ちゃんねらーは次々に遊び方を発案する。id:koizukaさんが当時をこのように言っている。


その上、サービスの予告をしなかったので、サイトに来た人はかなりめざとい人だけで、かつ少人数でしたから、いろんな新しい使い方を模索してくれました。

"かなりめざとい人"っていうのはおそらくν速民だろうなぁと思っているが、それはいいとして、ニコニコ動画(仮)は(仮)の間に2ちゃんねらーに最適化していくのだった。


にこにこ動画板(仮) - ネトネトより、当時の画像。いろいろ調べたが(仮)時代のスクリーンショットがこれしか見当たらなかった。当時は「やる気のなさ」がTOPページから染み出ていた。
f:id:amatanoyo:20061214132600j:imagef:id:amatanoyo:20061214131806j:image

(仮)時代の意義。

(仮)時代は"遊び場"として急激な成長を遂げることが出たし、機能面はほとんど完成されていた。この結果を生み出した要因は3つある。

  1. ひろゆきが2ちゃんねらーを対象に宣伝をしたこと。
  2. 宣伝はURLのみのもので、"遊び方"が全く分からなかったこと。
  3. 誰が運営しているのかわからなかったこと。

はじめから2ちゃんねらーを相手にしようというニワンゴの目論見は1、で達成された。ひろゆきブログを見ている人はたいてい2ちゃんねらーであったし、出始めがひろゆきのところからであったために例え非2ちゃんねらーに知られたとしても忌避されたに違いない。「ひろゆきがまた何かを始めた」という認識は確実に広がったが。
そして2、は初心者である2ちゃんねらーの行動を最大限に生かすためのものであった。下手に説明なんかしたら、最悪「宣伝乙」くらいで流されていたに違いない。現に事例がある
それに、ニコニコ動画(仮)は律儀なユーザーを相手にしていなかった。たいていのWebサービスはあらかじめガイドラインを作っておいてそれに見合うユーザーを獲得しようとすることが多いが、ニワンゴはそんな手法を取らずに2ちゃんねらーにすべてを任せた。2ちゃんねらーという、何をするのかわからない行動未知数なユーザーを相手にすることで、起こりうるあらゆる事象を先んじて調べることができたのだ。ニワンゴは"めざとい"ユーザーをうまく利用することでニコニコ動画の外形を作っていき、どのユーザーでも許容できるサービスを作ることに成功した。
だから、2、は

  1. 2ちゃんねらーが起こすアクションを知るため。
  2. 2ちゃんねらーが作る面白さを取り込むため。
  3. 技術的な問題をはじめのうちに経験するため。

という、周到に経験を積むために有効であった。


更に、3、にもあるように"ニワンゴが運営している"なんてことは誰も知らなかった*5。いくらひろゆきが宣伝したからといって、誰がどこが運営しているのかがわからなければニュースサイトに取り上げられることはない。これは(仮)が2ちゃんねらーを対象とした限定的なテスト環境を作る上で最も重要であった。
だから"ひろゆきが作った動画共有サイトニコニコ動画"であったし、利用者が2ちゃんねらーであったことから現実的にも"ニコニコ動画(仮)は2ちゃんねるの一部"であった。

ニコニコ動画の最初のユーザーは"2ちゃんねらー"。

かくして、ニコニコ動画(仮)は2ちゃんねらーによって最適化されたわけですが、これはニコニコ動画誕生から見え透いたことですね。2ちゃんねるにはすでに実況板があるように"実況"という概念はありましたし、何よりも発言できる環境であり共有できる場であったからこそ2ちゃんねらーが行動できて楽むことができたっていうのもありますけどもね。ちなみに、この件でニコニコ動画は実はすごいことをやっているのですが、そのことは次に回しますね。

熟成された(仮)時代の終焉と波乱に満ちた(β)時代の到来。

(仮)時代は2ちゃんねらーの"遊び場"として完成されたものになりました。"めざとい"ユーザー・2ちゃんねらー(当時は)真摯な運営によってニコニコできる動画共有サイトの原型ができたのです。
そしてニワンゴは(仮)で積み上げてきた経験を元にニコニコ動画(β)始めました。しかし、(β)は開始直後から波乱に満ちていました。


、、、続く。

ニコニコ動画(仮)に関して。

ニコニコ動画(仮)に関する情報は極端に少ない。まずニュースサイトに取り上げられていない時点で調べようがない。ブログを調べてみたけど、細かいことはほとんどなくて涙目。
id:koizukaさんの"ニコニコ動画(仮)の機能を振り返る"というエントリーとかニコニコ動画の作り方(注意;Flash)とか(β)開設以降のインタビューなんかの話で語られていることは、たいてい技術的なものか設立までの経緯とコンセプトくらいです。この時点で数多惨死寸前。
だから、ひろゆきがブログに書いたのが始めだったよなぁっていう記憶(asks?ユーザーでよかった)と、ニコニコ動画運営者ブログに載っていた昔話を元に書かにゃならんかったわけです。(仮)時代合わせてもコメントは10万件もなかったんですよ。サービス当初は400人程度見れば100個程度コメントがあればランキングで1位になれました。そんな規模ですよ。そんなサイトが数百万規模ですよ、笑っちゃいますわ。
ニコニコ動画(仮)TOPニコニコ動画(仮)2007年01月10日のランキング
InternetArchiveに現存する(仮)の様子。ちなみにこの時は(β)開始数日前のもの。再生数やコメント数から(仮)の終わりごろには人が集まり始めていたことがわかる。


ニコニコ動画っていう名前になった理由が書いてますが、実際に5秒できまったとあるように「かっこいいサービス名ではなく、肩のチカラが抜けた名称がいい。たとえばニコニコ動画とか」→ひろゆきのツボにはまったで決まったわけで意味なんて本当は(ry
最近になってやっと、[ニコニコ動画一周年] ニコニコ動画(仮)とは?で公開されていますが、でもやっぱりユーザー事情ではないんですよねー。


まあ、(前篇)はこれくらいにして次回は(β)からのお話です。

*1:ユーザーに関する情報はあまりなく、その上(仮)時代の記事はほとんど無いから、そういう条件下になってしまう。

*2:[http://d.hatena.ne.jp/amatanoyo/20071218/1197908477:title=ニコニコ動画のサービスとしての誕生の裏舞台。]で書いたが、改めて書くことにした

*3:[http://blog.nicovideo.jp/2007/08/post_162.php:title=昔話第五話参照]

*4:ブログのコメントが見れないのは、asks?の不具合でコメントが全部吹っ飛んだせい。しかしInternet Archiveには当時の記録がちゃんと残っている。 >http://web.archive.org/web/20070102133349/http://www.asks.jp/users/hiro/16329.html

*5:12月15日すでにwhoisでバレてはいた >http://ayohata.jugem.jp/?eid=291